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自賠責について

自賠責の歴史をご存知ですか?

自動車による人身事故が発生した場合、「不法行為」として被害者は加害者に対して損害賠償を請求することができます。この「不法行為」について、民法では次のように規定しています。

[民法第709条]
故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス

なんだか分かりにくい表現ですが、とにかくこの法律が賠償責任を行う際の基礎となっています。ただ、この民法では「加害者の過失により、損害が発生したことを証明する責任=挙証責任」が被害者側にあります。これでは交通事故に遭遇された被害者の負担が大きすぎるという問題がありました。そこでこの問題点を改善すべく、次に説明する1955年に自動車損害賠償保障法が施行されました。現在はこの法律に基づいて、「自賠責保険・自賠責共済」が運営されています。

自動車損害賠償保障法って?

自動車損害賠償保障法で最も画期的なことは、「挙証責任の転換」が盛り込まれたことです。民法では「挙証責任」が被害者にありましたが、自動車損害賠償保障法では「加害者が自分には落ち度がなかったことを立証しなければならない」と規定されました。これによって被害者が損害賠償を容易に受けることができるようになりました。

ただ挙証責任が転換されても、加害者に経済力がなければ、賠償を受けることができません。そのため、自動車損害賠償保障法では自動車の保有者に自賠責への加入が義務付けられました。これにより人身事故が発生した場合、死亡による損害で最高3000万円、傷害による損害または死亡に至るまでの傷害による損害で最高120万円、後遺障害による損害で最高4000万円までの補償を受けることができるようになりました。

自賠責で補償を受けられないケースも

自動車損害賠償保障法では、賠償責任を負う者を車の持ち主や運転者に限定せず、「運行供用者」としています。「運行供用者」とは自動車を自分の思いどおりに使うことができる状況(運行支配)にあり、自動車を運行することが自分の利益となる人のことを指します。

ただし、事故の相手車両が自賠責に加入していない場合や、ひき逃げ事故の場合には自賠責から保障を受けることができません。この場合は「政府の自動車損害賠償保障事業」から保障を受けることになりますが、自賠責と違って過失相殺が厳しく行われるなど、様々な制限があります。

自賠責保険と政府の自動車損害賠償保障事業の違いは?

補償事業によっててん補される損害の範囲および限度額は、自賠責保険の基準と同じです。しかし、次の点が大きく違います。

過失相殺が厳密に行われる

自賠責では、被害者に過失がある場合でも原則として限度額までは全額補償してくれますが(但し、被害者に重大な過失がある場合等、減額が行われるケースがあります)、補償事業では、被害者側の過失が厳密に相殺されます。例えば、横断歩道の手前を横断していた場合、「横断歩道を渡っていない」ことについて過失相殺される場合があります。

自賠責保険のような仮渡金、内払金の制度はない

自賠責では治療費中であっても治療費や生活費の一部等を必要に応じて仮渡金や内払金として受け取る事が可能です。しかし、補償事業には仮渡金や内払金という制度がありません。そればかりでなく、保険金が支払われるまでに1年近くかかります。その間の治療費などは自分で支払わなくてはなりませんので、経済的な負担が重くのしかかります。 また、社会保険を使用しないで治療した場合、社会保険を使用すれば給付されるであろう金額が差し引かれるので注意が必要です。

加害者になった場合は

自賠責では治療費や慰謝料等被害者に支払った保険金を加害者に請求することはまずありませんが、補償事業では政府が被害者に支払った保険金を、加害者に請求します。当然のことですが、万が一加害者になった場合はその責任はとても重いものになります。

次のような事故でも保障事業の対象に

補償事業の対象となる事故は、ひき逃げのような悪質な事故だけではありません。車検制度のないミニバイク等では、更新をうっかり忘れてしまい、気が付かないうちに無保険車になっている場合があります。また、ナンバーのないフォークリフト等が路上に出てトラックに荷物を積み込む光景をしばしば目にしますが、これもれっきとした無保険車です。

このような無保険車による事故であっても、加害者としての責任が厳しく追及されます。「つい、うっかりして・・・」「この程度なら・・・」、この言葉の背後には大きな危険がはらんでいることを、再度認識したいものです。

保険金支払いまでの流れ

先日、私の知人が事故の加害者になってしまいました。簡単な物損事故で済みましたが、「こんなことで加害者になってしまうのだ・・・」。そう考えさせられる内容でした。今回は実例に基づき、万一事故を起してしまった時の保障について考えてみましょう。

ケーススタディ

友人が一車線の道路を走行中、携帯電話が鳴りました。電話に出ようと思い、後方を確認した上でウィンカーを出して、道路左側に停車しました。その時、後方でオートバイが転倒しました。

友人は車を降り、ライダーを助け、ケガの状況を確認しました。転倒したバイクはカウルが破損しただけで、幸いにもライダーにケガはありませんでした。また転倒したバイクも友人の車に接触していませんでしたので、単なる転倒事故だと思っていました。

ところが、そのライダーは友人が「停車したため、進路をふさがれ転倒した」と主張し始めました。友人は「道路の左側から追い越しをかけようとしていたのではないか」と反論し、双方の意見が対立しました。埒があきませんので警察を呼んで実況見分をし、保険会社に示談交渉を任せました。

その結果、過失割合は「友人6:ライダー4」となり、任意保険を使った物損事故として処理することになりました。根拠は、やむをえない理由で停車した場合には後方のバイクの過失が大きくなりますが、緊急性のない理由で停車した場合には道路の歩道寄りを走行するバイクの進路をふさいだ友人に過失が大きくなるとのことでした。とくに二輪車の場合は自動車に比べて危険度が高くなるので、その分過失割合において保護されているようです。

もしも人身事故になっていたら

今回の友人の事故は、物損事故で済みましたが、人身事故となると様々な補償をしなくてはなりません。もちろん、それらは保険でカバーされますが、補償の対象となる範囲は意外にも広範囲にわたります。

壊れたバイクの修理代は物損事故として、対物賠償保険から支払われます。しかし、ライダーがケガをした場合には人身事故となり、対人賠償保険から支払われます。対人賠償保険から支払われる損害を大別すると、次の5つに分類されます。

①積極損害

診察費や入院費といった治療費がこれに該当します。通院のための交通費もこれに含まれます。

②消極損害

一般的に休業損害といわれるものです。通院や入院のために休業したために得られなかった収入がこれに該当します。

③入通院慰謝料

ケガの程度に応じて支払われる慰謝料です。

④後遺障害慰謝料

後遺症が残った場合に支払われる慰謝料です。

⑤後遺障害逸失利益

後遺障害が残ったことで得ることのできなかった収入を逸失利益として計算されます。

これらの損害は、まずは自賠責保険で支払われ、足りない部分については任意保険から支払われます。

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